「お客様からの理不尽な要求でも、我慢して対応するしかない」と従業員に無理をさせていませんか。

2025年6月に改正労働施策総合推進法が公布され、2026年10月1日から、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策が事業主の義務となります。従業員を1人でも雇用していれば規模を問わずすべての事業主が対象で、経過措置はありません。施行まで残り3か月となった今、本コラムでは義務化の内容と準備すべきことを解説します。

なぜカスタマーハラスメント対策が義務化されるのか

顧客からの暴言や土下座の強要、長時間の執拗なクレームなどにより、従業員が精神的に追い詰められ、休職や退職に至る事例が社会問題となっています。顧客からの著しい迷惑行為が原因で精神障害を発症し、労災と認定されるケースも増えています。

パワハラやセクハラと異なり、カスハラは「社外の人」が加害者となるため、これまで企業の対応は後手に回りがちでした。そこで今回の法改正により、従業員を守る体制づくりが企業の責任として明確に位置付けられました。

法律が定めるカスハラの定義

法律上のカスタマーハラスメントは、次の3つの要素をすべて満たすものをいいます。

  • 顧客、取引の相手方、施設の利用者などの言動であること
  • 業務の性質などに照らして社会通念上許容される範囲を超えたものであること
  • それにより労働者の就業環境が害されること

ここで注意したいのは、商品やサービスへの正当な指摘・クレームまで排除するものではないという点です。求められているのは顧客対応の質を下げることではなく、「範囲を超えた言動」から従業員を守る線引きを企業として持つことです。

企業が準備すべき対応

厚生労働省の指針では、事業主が講ずべき措置として次の内容が示されています。

  • 基本方針の明確化と周知(カスハラから従業員を守るという会社の姿勢を社内外に示す)
  • 相談窓口の整備(誰に相談すればよいかを決めて従業員に周知する)
  • 事後の迅速かつ適切な対応(事実確認と被害を受けた従業員への配慮の流れを決めておく)
  • 悪質な行為への対処方針の整備(対応の打ち切り基準や複数名対応などをマニュアル化する)
  • 相談者のプライバシー保護と不利益取扱いの禁止

義務に違反しても直接の罰則はありませんが、行政による助言・指導・勧告の対象となり、勧告に従わない場合には企業名が公表されることがあります。採用や取引への影響を考えると、決して軽いリスクではありません。

最後に

カスハラ対策の整備は、従業員に「会社は自分を守ってくれる」という安心感を与え、離職の防止や採用力の向上にもつながります。是非、施行前のこの時期に基本方針の策定と相談体制づくりから始めてください。

当事務所では、カスハラ対応の基本方針や社内マニュアルの作成、就業規則の見直しのご支援が可能ですので、不安な点等がございましたらお気軽にお問い合わせください。

最後までご覧いただきありがとうございました。