「36協定を提出しているから大丈夫」とお考えではないでしょうか。
近年の労働基準監督署(以下、労基署)による調査は、以前と比べて大きく様変わりしています。紙の書類だけでなく、デジタルデータまで照合されるようになった今、これまでの対応では摘発リスクを防げないケースが増えています。
この記事では、最近の労基署調査で特に重点的に確認されているポイントと企業が今すぐ取るべき対策についてお伝えします。
なぜ今、労基署調査が厳しくなっているのか
背景には、長時間労働による過労死・過労自殺の問題が社会的に大きく取り上げられたことがあります。また、2019年の「働き方改革関連法」施行以降、時間外労働の上限規制が法律で明確に定められたことで、摘発の根拠が整備されました。
さらに、電子記録の普及により、調査官が確認できる情報量が格段に増えています。以前は「書類さえ整っていれば」という対応でも通用していましたが、今はそれだけでは不十分でケースが非常に多くなっています。
調査で”ここ”を見られています

① PCログとタイムカードの照合
最近の調査では、入退館記録・PCのログオン/ログオフ記録とタイムカードや勤怠システムのデータを突き合わせるケースが増えています。
「実際には深夜まで働いているのに、タイムカードは定時で打刻されている」——こうしたサービス残業は、PCログがある限り隠しようがありません。勤怠記録とデジタルログに矛盾がある場合、その説明を求められることになります。
また、PCログの表面だけを訂正しても意味はなく、調査においては、システム内部のデータを確認するため問題の解決になりません。また、訂正や改訂は判明すれば調査によるペナルティだけでなく社会的な信用も失う可能性があるので絶対にしないようにして下さい。
② 「名ばかり管理職」問題
管理監督者(いわゆる管理職)に残業代を支払っていない会社は多いですが、法律上の管理監督者と認められるには厳しい要件があります。
- 経営上の重要事項に関与していること
- 出退勤の自由があること
- 相応の待遇・処遇を受けていること
「役職名が課長・部長だから」という理由だけでは認められません。実態が伴っていない場合、未払い残業代として大きな金額を請求されるリスクがあります。
③ 研修・副業の「労働時間」問題
「本人が希望した研修だから労働時間ではない」「副業は別の会社だから関係ない」——このような認識が通用しなくなってきています。
自己研鑽とみなすには、業務との関連性がなく、参加が完全に任意であることが条件です。会社が推奨・指示した研修は、原則として労働時間とみなされます。
また、副業・兼業をしている従業員がいる場合、自社と副業先での労働時間を通算して管理する義務があります。副業先で長時間働いた結果、自社分と合算して上限を超えるケースも想定しなければなりません。
④ 「36協定を出しているだけ」では危険
36協定(時間外・休日労働に関する協定)を締結・届出していても、それはあくまで上限の枠を設けたに過ぎません。
- 協定で定めた時間数を実際に超えていないか
- 特別条項を適用回数を守れているか
- 適用対象者・部署の管理は適切か
これらが実態と一致していなければ、協定を出していても意味がありません。「出してあるから安心」という状態が、最も危険です。
私の知っている会社様でも36協定の届け出はしているが残業の概念がなく、社員を遅くまで働かせてしまい結果として36協定違反をしてしまっている会社様は意外とたくさんありますのでご注意下さい。
経営者が今すぐ確認すべきこと
調査を受けてから慌てるのではなく、日頃からの整備が何より大切です。以下の点を改めてご確認ください。
- 勤怠記録とPCログに矛盾がないか
- 管理職が実態として相応の処遇を受け出退勤の自由があるか
- 研修・資格取得の位置づけが業務との寒冷性がなく任意で参加することが認められているか
- 副業を認めている場合、労働時間の通算管理ができているか
- 36協定の内容を理解し適法に労務管理をしているか
まとめ

労基署調査は、もはや「書類を見せればよい」時代ではありません。デジタルデータとの照合により実態が浮き彫りになっています。 また、最近では、勤怠記録とPCログの乖離のチェックのような作業はAIが代わっておこなうことが増えてき、調査員は経営者や勤怠の実態を担っている人へヒアリングを重視する傾向となっています。
「うちは大丈夫」と思っていても、思わぬところにリスクが潜んでいることも少なくありません。
労働時間管理の見直しや36協定の整備、就業規則の確認など、他人事ではなく、自社の備えとして一度点検することをおすすめします。
ご不安な点・ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。当事務所では、労働時間管理の見直しや就業規則の整備など、労務コンプライアンス全般のご支援が可能です。
最後までご覧いただきありがとうございました。
