最低賃金引き上げへの対応 10月改定までに企業がやるべきこと
自社の賃金が今年の改定後も最低賃金を下回らないか、確認できていますか。
最低賃金は毎年見直され、例年10月頃から新しい金額が順次適用されます。昨年度(2025年度)は全国加重平均で66円の引き上げという過去最大の改定となり、今年度も引き上げが見込まれています。時給のパート・アルバイトだけでなく、月給制の従業員でも最低賃金を下回る事例は起こり得ます。 本コラムでは、改定の仕組みと今から準備すべきことを解説します。
最低賃金はどのように決まるのか
最低賃金は最低賃金法に基づき、都道府県ごとに定められています(地域別最低賃金)。毎年夏に国の審議会が引き上げ額の「目安」を示し、それをもとに各都道府県で金額が決定され、例年10月頃から順次発効します。
雇用形態を問わず、パート・アルバイトを含むすべての労働者に適用され、最低賃金を下回る賃金で働かせた場合は、たとえ本人が同意していても無効です。差額の支払い義務が生じるほか、50万円以下の罰金の対象にもなります。
引き上げが続く背景と今年の見通し
2025年度の改定では、全国加重平均が1,121円となり、初めてすべての都道府県で1,000円を超えました。なお、大阪府は1,177円で全国でトップクラスの水準です。
政府は「2020年代に全国加重平均1,500円」という目標を掲げており、物価上昇への対応もあって、今後も大幅な引き上げ基調が続く見通しです。「毎年のことだから」と後回しにせず、改定を前提とした賃金設計が求められる時代になっています。
自社の賃金が下回っていないか確認する方法
確認の手順は次のとおりです。
- 対象となる賃金を整理する(通勤手当・家族手当・精皆勤手当・時間外手当・賞与は最低賃金の計算から除外します)
- 時給に換算する(月給制の場合は「対象となる月給÷月平均所定労働時間」で計算します)
- 都道府県の最低賃金額と比較する
例えば大阪府で、月給185,000円(うち通勤手当5,000円)、月平均所定労働時間160時間の従業員の場合、対象となる賃金は通勤手当を除いた180,000円です。180,000円÷160時間=時給1,125円となり、大阪府の最低賃金1,177円を下回っているため、このままでは最低賃金法違反となります。月給の額面だけを見て「大丈夫」と判断できない点に注意が必要です。
実務での対応ポイント
10月の改定に向けて、次の準備を進めることをおすすめします。
- 全従業員の時給換算額を一覧にする(改定見込み額に上乗せの余裕があるかまで確認する)
- 雇用契約書・賃金規程を見直す(改定のたびに個別対応しなくて済む賃金体系を検討する)
- 業務改善助成金を確認する(賃上げとあわせて設備投資等を行う場合に活用できる制度です)
まずは、最低賃金の近辺で働く従業員が誰であるかを洗い出すことが出発点です。そのうえで、引き上げ後の人件費を資金計画に織り込み、必要に応じて業務の効率化や価格転嫁もあわせて検討しておくと、改定後に慌てずに済みます。給与計算システムの単価設定の更新も忘れやすいポイントですので注意が必要です。
最後に
最低賃金への対応は、法令遵守にとどまらず、人材の確保・定着にも直結する経営課題です。是非、目安が示されるこの時期から自社の賃金の点検を始めてください。
当事務所では、時給換算による賃金チェックや賃金規程の見直し、業務改善に関する助成金の申請のご支援が可能ですので、不安な点等がございましたらお気軽にお問い合わせください。
最後までご覧いただきありがとうございました。
