うつ病などの精神障害が「労災」と認定されるケースが増え続けていることをご存知でしょうか。

厚生労働省の発表によると、2025年度(令和7年度)に精神障害で労災認定された件数は1,082件で、7年連続で過去最多を更新しました。請求件数も4,958件と大幅に増えています。原因として最も多いのはパワーハラスメント(222件)で、カスタマーハラスメントとセクシュアルハラスメント(各127件)が続きます。もはやどの職場でも起こり得る問題です。
本コラムでは、労災認定の仕組みと企業が備えるべきことを解説します。

精神障害が労災と認定される3つの要件

精神障害の労災は、国の「心理的負荷による精神障害の認定基準」に基づき、次の3つの要件で判断されます。

  • 認定基準の対象となる精神障害(うつ病等)を発病していること
  • 発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
  • 業務以外の心理的負荷や個体側の要因により発病したとは認められないこと

業務による心理的負荷は、「業務による心理的負荷評価表」に示された具体的な出来事に当てはめて、「強」「中」「弱」の3段階で評価されます。

認定基準にはカスハラも明記されています

2023年9月の認定基準改正では、心理的負荷評価表に「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」という項目が追加されました。つまり、カスタマーハラスメントによる精神障害も労災として正面から評価される仕組みになっています。

2026年10月からカスハラ対策が事業主の義務となるのも、この流れの延長線上にあります。「社外の人が相手だから会社の責任ではない」という考え方は、すでに通用しなくなっています。

労災認定が企業に与える影響

従業員の精神障害が労災と認定されると、企業には次のような影響が及びます。

  • 療養中とその後30日間は原則として解雇できない(労働基準法の解雇制限)
  • 安全配慮義務違反として損害賠償を請求されるリスクがある
  • 労働基準監督署の調査や、社内外からの信用低下につながる

金銭的な問題にとどまらず、職場の士気や採用への影響もあり得る、経営に直結するリスクです。

未然に防ぐための体制づくり

予防の柱は、心理的負荷の大きい出来事を職場からできる限り減らすことです。ハラスメント相談窓口の実効性の点検、長時間労働の削減、ストレスチェック結果を活かした職場環境の改善、カスハラから従業員を守る対応ルールの整備を、一体で進めることをおすすめします。

※ここに実体験・事例を追加

最後に

精神障害の労災は、発生してからの対応では手遅れになりかねません。是非、自社のハラスメント対策と労働時間管理を今一度点検してください。

当事務所では、ハラスメント防止体制の整備や労働時間管理の見直し、労災発生時の手続のご支援が可能ですので、不安な点等がございましたらお気軽にお問い合わせください。

最後までご覧いただきありがとうございました。